World Music

80年代、ロック・カメラマンとして活躍していた頃、ふとした機会に、ファドのアマリア・ロドリゲスのステージを撮影することになった。髪を逆立て、腰に手ぬぐいをぶら下げたパンクスの格好で劇場に行った僕に、主催者の人はびっくりしたと思う。そこで、聴いたことのない音楽に衝撃を受けた。その僕が撮影した写真を、アマリアさんは、「自分の最高の写真」ととても気に入ってくれて、その後の来日公演でも、いつも僕を呼んでくれた。

それから、ピアソラとの出会い。日本では当時まだ無名で、会場は空席が目立ったが、ステージは熱く、足が震えるほど素晴らしかった。すぐ楽屋に行って、オフも撮らせてほしいと申し出て、追っかけた。ピアソラも喜んでくれた。

この二人との出会いで、世界にはいろいろ素晴らしい音楽があることを思い知り、ワールドミュージックを本格的に撮るようになった。当時、日本はバブルの絶頂で、アジアから、ヨーロッパから、アフリカから、ラテンアメリカから、最高のミュージシャンがやってきていた。

そして気がつくと、僕自身も海外の音楽祭に、オフィシャル・カメラマンとして招待されるようになっていた。